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緑の復元 ヒントは樹海
  富士山の樹海にはほとんど土がない。かつての噴火で森ごと溶岩に飲み込まれ、一度はほぼ死滅した。それでも今、あれだけ巨大な森があるのはなぜだろうか。
  溶岩はスポンジのようにプツプツと穴だらけ。その小さな穴が水を吸い込み、湿度を保つ。そこにコケが生え、生命が根付いていく。だから樹海は、まるで屋久島のようにコケのじゅうたんが美しい。溶岩からあの巨大な森が生まれたのだ。
  これをヒントに自然環境の復元に立ち向かおうとしている人と出会った。日本ナチュロック社長の佐藤俊明氏。火山列島の日本では迷惑と思われがちな溶岩を集めてスライスし、パネルにはり付けた建築用資材「溶岩パネル(ビオフィルム)」を開発した。
 

2007年6月30日発行 日本経済新聞より抜粋

自宅の壁に「溶岩パネル」をはりつける野口氏
 コンクリートなどの無機質な構造物をこの溶岩パネルを覆うことで、微生物が生育し、コケなどの植物や昆虫、小動物が生息する環境が生まれる。すでに都市の一部で道路脇の壁などに貼られていて、灰色一食だった壁がコケに覆われて緑になり、虫が生息するようになった。それだけじゃない。二酸化炭素の吸収効果や断熱効果があり、夏は涼しく、冬は暖かい。ヒートアイランド現象の緩和に役立つし、省エネにもつながる。また、溶岩の多孔質な構造には吸音効果もある。実際、樹海では県道から数10メートル離れただけで車の音が聞こえづらくなる。
 
 
 日本各地でむき出しになっているコンクリートが、どれだけ景観と環境を台無しにしていることか。だが、今さら壊すこともできない。ならばその上に溶岩をはり付けることで、景観や環境の保護につながるような製品を作ろうと情熱を燃やしたのが佐藤氏。日本中の露出したコンクリートを、緑に変えるのが彼の夢だ。
  いくら環境保護を訴えても、経済の足を引っ張っては先に進めない。環境も大切だが、相手が人間社会だけに現実問題として日々の生活も大切。環境対策が技術開発につながり、利益も生み出さなければ自然を守ろうと訴えたところで定着するわけがない。環境と経済の両立、その実現には人々の知恵が必要なのだ。
  佐藤氏とともに、「溶岩パネル」を広めたい。我が家の庭も、すでにこの溶岩で覆われている。
 
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