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1988年7月6日

溶岩ブロックで「自然景観との調和狙う」



1988年7月6日(水) 天然石利用のブロック考案

自然景観との調和狙う

「こんなブロック見たことあるかい」−。赤松林に囲まれた南都留郡忍野村の工場で、日本ナチュロック専務の佐藤俊明さんは出来上がったばかりの製品をひとつひとつ取り上げてはこう語る。白く冷たい従来のコンクリートブロックのイメージを破って、表面に天然石を埋め込んだニュータイプ建材の考案者。三年前、関連会社・富士特殊コンクリート工業で開発したところ、自然にマッチし環境保護に役立つ製品として注目された。

企業化にめどがついたため、昨年十一月、日本ナチュロックを設立、五月から本格的に全国への普及に乗り出した。佐藤専務は「全国で技術提携を進め、求められているものをより安価で提供していきたい」と日に焼けた顔を引き締める。

「ヨーロッパの街並みには、コンクリートの白い肌はどこにも見られない。壁や石垣、道路に至るまで天然石を多用し環境保護に努めている。近年、日本でもこうした意識は高まりつつある当然ナチュラル感覚の建材が求められてくるが、表面に模様をつけたり、着色した従来の商品はまだまだ役不足だ。究極は天然石で表面を覆うことだ」と開発の動機を説明する。

廃材などを利用
富士北とくは周辺の環境を考慮し、石積みなどの土木工事に溶岩を使うケースが多い。ヨーロッパと同じ手法だが、環境規制の強化で採掘は難しくなっている。

「道路工事で廃材になったものや民有地の溶岩を有効利用し、従来の積みブロックに付着させる。本物の天然石の美観を持ち、施工がしやすく、しかも低コストで生産できる。こうして新時代へ向けた付加価値商品が誕生した」と胸を張る。

全国の会社と提携
ブロック業者はメーカーを含め全国に約千百軒。主流は従来の土木用ブロックだが、輸送コストがかさむため製造元の地域でさばく以外にない。需要は限られ、画一的な商品はダンピング競争で値下がりし、業界は低迷している。

「富士山の溶岩を中心にフタートしたが、独特の埋め込み技術によって材料を選ぶ必要はない。地域の特産の石を利用することが可能で、幅広いニーズにこたえられる。このため全国のメーカーと提携して生産できる」

商品化して以来、全国各地の設計事務所や関係企業など役二百社から問い合わせが相次いでいる。新商品の魅力を十分相手に伝えるため、佐藤さん自ら全国各地を巡る。

「想像以上の反響で体がいくつあっても足りない。一県一工場の専用生産権システム方式を確立し、全国を二十三社程度で分割して普及を図る。当面の目標は十社。ひとつひとつ慎重に固めていく」と方針を語る。一週間のうちでデスクに座るのは数えるほど。「日曜日もなにもない。最近、家で夕食を食べたことがない。女房も割り切ってしまったかな」と笑う。

多額の投資不要
一番の誇りとする製造技術は、従来のブロックマシンによる成型と、手作り方式のいずれでも可能で、多額の設備投資が不要な点。「特殊な埋め込み技術で、コンクリートの洗い出しをせず、汚水を流す心配もない。環境保全を目的に考えだした製品なので、製造過程で公害を出すでは元も子もない」と説明する。

「何事にも熱くなる性格だ」と自己分析。高校時代から始めたヨットでは国体に十三回出場した。現在、県ヨット連盟の副理事長を務める。「あと十年たてば、コンクリートの肌が見えるような工事は一切なくなるだろう。富士山のすそ野の環境条件から必然的に生まれた天然石ブロックの技術を、全国に普及させることに誇りを持っている」と目を輝かす。<鈴木 精貴記者>