1995年3月16日
企業と環境「天然石埋めたブロック」「景観保全の波で急成長」
平成7年3月16日 朝日新聞「企業と環境」
企業と環境
川の護岸や砂防ダム、道路ののり面などにコンクリート壁が使われ、警官を損ねている場所に出会うことは少なくない。そこで、風景にマッチした色合いや自然な感じが出せるように天然籍をはめこんだコンクリートブロックを開発、「ナチュロック」と名付けて全国的な販売を展開しているのが南都留郡西桂町の「富士特殊コンクリート工業」だ。1986年に「日本ナチュロック」(本社、東京都港区)を設立、景観保護の波に乗り、全国三十社と技術提携して販売網を広げ、急成長をしている。
「十年前は表面に凹凸があるブロックなんて業界では受け入れられなかった。それが環境への関心の高まりを背景に、ここ数年で急に伸びた」と佐藤俊明専務は話す。表面に意思の模様があるものや、石を張ったものはあるが、石をそのまま埋め込んだブロックはそれまでなかったという。
開発のきっかけは、富士山六合目付近の落石防止工事を手がけたことだった。環境庁からコンクリート壁は景観保護上だめだと言われ、溶岩をはめ込んだブロックを開発。それ以来、富士箱根伊豆国立公園内の護岸はほとんどナチュロックで仕上げられ、県内外の護岸、砂防ダム、宅地造成などに幅広い需要が出てきた。
大量生産のための機械を苦労して開発し、四年前に多額の投資をして西桂町に工場を建てた。一日三千個のブロックを生産しているが、石をはめ込むのは手作業に頼る。十人前後のパートの女性がラインに並び、色や大きさなどを考えながら一つひとつ石を選び、ブロックのわくに並べる。
表は石積みのように見えるが、裏はコンクリートなので、強度的には普通のコンクリート壁と同じ。販売当初は、郷土の心配をする自治体の担当者も多かったが、佐藤専務は「フランスのコンクリート研究所を視察した時、表面は強度のない石でも、裏のコンクリートがしっかりしていればいいという考え方に接し、自信を持つようになった。欧米はまず景観を優先させる。日本の考え方よりよっぽど進んでいた」と話す。
表面に凹凸が多いので、年数がたつとコケや草が生え、自然な状態に近づくことも特徴だ。山梨大学土木環境工学科と共同で、景観への配慮や、ナチュロックとコンクリート壁の汚れ方などについて研究、土木学会でも発表もしている。
現在開発しているのは、コケなどの生えやすい素材を使ったブロック。佐藤専務は「農業用水や中小河川のコンクリート化が生態系を崩すと言われてますね。これをターゲットにしたい」と目を輝かせる。近く先進地ドイツの中小河川を視察する予定だ。