1995年10月15日
「景観との調和、環境の保護」発想を製品化して脚光
1995年10月15日 情報誌みのえど
町長が行く!
『景観との調和、環境の保護』発想を製品化して脚光
訪問先 日本ナチュロック株式会社
専務取締役 佐藤俊明氏
「セラミックスタイル美濃’95」が開催された
千葉・幕張メッセ「BUFF’95」のシンボルマークとして
日本ナチュロックが生態系を保護するブロックや溶岩を出展して
来場者に大きなインパクトを与えていた。巷間で言われる環境や景観を、
単なる流行りではなく本来のあるべき姿で捉える同社に、その本質を聞くべく
町長が行く!
水野 建築・都市総合技術展というコンセプトに移行したBUFF’95を象徴するような、環境や景観を意識したブース演出がなされていて、ひときわ目を引きます。行政の立場からも、タイルの産地という見地からも非常に関心の高いテーマを打ち出されています。是非そのコンセプトをお聞きして、私どもの参考にさせていただければなと思います。まずは、個性的な社名の由来などから・・・。
佐藤 私どもの考え方は、外国から製品を持ってくるのではなくて、富士山なら富士山の周りにある石、岐阜なら美濃石といった具合に、ごく身近にあって、高くない素朴な石で道路や川を造るのが景観を守ることに通じるというものなのです。そうした方がその知の自然と調和する、ということですね。そこでナチュラルなブロック、つまり日本ナチュロックとなったわけです。
水野 とてもいい社名ですね。その発想でナチュロックを開発されたのはいつ頃ですか?
佐藤 10年ほど前に、ダムや河川の擁壁がブロックに占領されていくのは、自然との調和や環境との関係からして絶対によくないと思いまして、その土地の石とコンクリートブロックを組み合わせることに思い至って特許を取ったわけです。たまたま私どもの会社が富士箱根国立公園の中に位置しているものですから、富士山周辺の土木工事にナチュロックを使っていただいたのが始まりですね。その後8年前位に富士山の登山道で落石事故が起きまして、落石防止の土留めが必要ということで、山梨県から私どもに声がかかりました。工期が一ヵ月しかないので石を運んでいったのでは到底間に合わない。それでは、そこにある石をコンクリートと複合化させようということで、そこにあった石を元に戻す恰好で完工しました。それを環境庁が見て、何も表から天然石を持ってこなくても、ここの石で天然石が見えるじゃないかと、工法的にも強度があって施工が楽だと、富士山の周りはやはり富士山の石を使ったこういうものでなければいけない、とお墨付きをいただいたのが普及するきっかけでした。実質的な第一号ですね。
水野 県の仕事から実績ができて、環境庁が認めたとなると、国レベルの仕事にも波及していったのでしょうね。
佐藤 ええ、それ以来建設省の関係でも色々と工事をいただいております。いまでは、各地に拡がっていますので、その場所に合う色調をコンピュータで、シミュレーションして提案しています。
- 三宅島の溶岩を富士山に 同じ火山帯でリサイクル
水野 景観のシミュレーションもそうですが、生態系を保護するという環境対応の展開も興味深いですね。
佐藤 最近の例では、首相官邸前の擁壁工事がありましたが、周囲を見ると天然石に蔦が絡まっている。そこで、私どもも数年後にはここで植栽ができるように、ナチュロックに隈なく種を蒔きました。じきにコケが生えるはずです。つまり、一般的なただ石だ、ブロックだという景観の考え方ではなくて、草やコケが生えるという、自然との共生も意図したところに大きな特徴があります。多孔質環境ブロックという穴がいっぱいある製品がそれを表わしたものです。
水野 笠原にも山がありまして砂防工事が決まっていますが、コンクリートの打ちっ放しでは気が利かないですかね。
佐藤 私は、ただコンクリートブロックを使えばいいという時代は、終わったと思っています。ドイツあたりでは、コンクリートで造られていた河川などがどんどん壊されて元に戻りつつあるそうです。やはり景観と生態系がテーマなんですね。日本でも数年後にはそうなっていくように思いますね。
水野 性格上、全国的な規模での展開ということになるでしょうから、市場は大きいですね。
佐藤 確かにそうです。本当は、地元の企業がこうした発想で地元の石だとか、土だとかを使っていければいいんでしょうが、皆さんまだ外から持ってくることにとらわれていますから・・・。例えば富士山をリゾート開発で破壊したら、同じ火山帯で材料が余っている三宅島から溶岩を持ってきてあげる。これはひとつのリサイクルですよね。人間が壊した自然を修復する―――人間がやらなければいけないことだと思います。こうした考えに賛同していただいている業者さんを全国的に組織化していまして、岐阜県にも2社あります。
■天然に近い安価なタイルを 複合化すれば需要は多い
水野 笠原町のタイル展をご覧いただいてどんな感想をお持ちになりましたか。
佐藤 初めてじっくり見させていただきましたが、充分にジョイントできる部分があるように思いました。私どもが景観・環境の部分を受け持って、絵を必要とするところにシール貼りでタイルを組み合わせていけば、石でっを描くよりも相当に手間が省けますしね。
水野 基本的にはランダムなものがいいでしょうね。
佐藤 そうですね。ランダムな形でもし多孔質で穴があいていればコンクリートブロックにタイルを貼っても水分が保持できて、生き物も生きられる。そんな形で複合化できると思います。
水野 技術的には防湿性や透水性、強度などタイルでもクリアできていますので期待に応えられると思いますよ。
佐藤 擁壁の場合、車のライトが光るとまずいというものがあります。それとタイルは高い。ですから、光の吸収も考えて天然と全く同じようなものが安くできれば、物件は多いのでかなりの量がさばけると思いますよ。コンクリート製品メーカー向けのタイルとして取り組んだら、確かにニーズはありますね。
水野 貴重なヒントをうかがいました。最後にもう一度製品開発のモットーをお聞かせください。
佐藤 景観材料とは何かとか、強度の問題とかにとらわれていたら本当の景観を考えることはできません。まず、地球は人間だけのものじゃない。生き物が生きられる環境をつくる。それにはどうすればいいか、そこを原点に発想していくことが今後はもっと望まれると思います。
水野 どうもご多忙のところ有難うございました。タイル業界も環境にもっと目を向けるべきだと痛感しました。
<9月20日、幕張メッセで収録>