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1997年11月1日

多孔質環境が都市の緑化を促す

1997年11月1日 ランドスケープデザイン

第8回建築・都市総合技術展“BUFF’97”に「生態系ピラミッド」が出現
多孔質環境が都市の緑化を促す

第8回建築・都市総合技術展“BUFF’97”が、9月17日〜19日まで、千葉・日本コンベンションセンター(幕張メッセ)で開催された。会場には100を超える企業が「21世紀の家づくり・街づくり」をテーマに出展。ランドスケープゾーンで目をひいたのは、シンボルパークに展示された「生態系ピラミッド」である。

コンクリートと溶岩を複合させた「ナチュロックビオボード」
日本ナチュロックの佐藤俊明氏が総合企画デザインを担当したこの生態系ピラミッドは、高さ4mのピラミッド型のコンクリート構造物の表面を220枚のナチュロックビオボードで覆っている。ナチュロックビオボードはコンクリートと多孔質な天然石(溶岩)を複合させることにより、コンクリートの持つ強固な安全性を損なわずに植物や虫、小動物などの暮らす場を創出する特徴があり、日本ナチュロックと日本セメントの共同開発により製品化された。
コンクリートと溶岩を複合させるという発想は、富士山北西の山麓にひろがる青木ヶ原の樹海にヒントを得て、生まれた。西暦864年、富士山の中腹から流れ出た溶岩は、やがて冷え固まり、大森林地帯を形成してゆく。その要因は溶岩という多孔質環境にある。隙間の多い、ポーラス状のこの天然素材は適度な湿気を含み、コケ類や微小藻類が付着しやすく、生物が生息するための絶好の自然環境を創出したのである。
ナチュロックビオボードは、この自然界の仕組みを応用して開発されているため、たとえコンクリートの無機質な垂直壁面であっても、緑化が可能になる、という。
BUFF’97に展示された生態系ピラミッドについて、佐藤氏は「生物の生息環境としては決して条件が良いとはいえない都市のコンクリート砂漠であっても、ビオボードで施工することにより緑化は可能であるということを示したかったのです。生態系ピラミッドはその象徴です」と話す。またビオボードは、四季の変化とともにコケ類などの植物が自然発生してゆくため、わざわざ植栽をする必要もないという。
「都市空間の中で植栽をしても、枯れる場合が多いですよね。それはどこかで植物に無理をさせているからで、生き物の生息しやすい舞台を提供しさえすれば、植物は勝手に生長します。自然な緑化、適度な緑化が多孔質環境の特徴で、ナチュロックビオボードには草花やツタなどを這わせる植栽孔もつけてありますが、基本は生き物が生育するための手助けをする素材だと思っています」と、佐藤氏は語る。

既存構造物を壊さずに表面を覆う方法
ビオトープ空間を創出する舞台として、この多孔質素材は護岸などにも使用されるようになってきている。水際部はコケ類の生長が早いので、小動物や魚の餌場となり、水の浄化も促すため、その土地の失われた生態系の復元に貢献できるという。また既存構造物を壊さずに表面を覆うだけの工法なので廃材を排出せず、施工中の周辺生態系への影響も最小限に抑えることができる。
1997年のグッド・デザイン賞選定商品となったナチュロックビオボードは、この生態系ピラミッドに象徴されるように、これからの都市緑化にひとつの方向性を示唆してくれる景観素材である。
なお、同社では環境問題などに関心の高い企業からの要請があれば、生態系ピラミッドの展示、貸し出しも検討している。

写真注釈:“BUFF’97”シンボルパークに展示された生態系ピラミッド。コンクリートの壁面をナチュロックびおぼーどで覆うことにより、緑化が可能になる。