1997年11月4日
天然素材を有効活用 「天然石張り護岸パネル」「草が生え景観保つ」「都市部の生態系再生も」
1997年11月4日 日本経済新聞
天然素材を有効利用
草が生え景観保つ 都市部の生態系再生も
これまで十分な使い道のなかった天然素材などに新たな用途を見いだし、有効活用する動きが相次いでいる。コンクリートの代わりに天然石を生かした素材で河川を改修して環境に配慮する試みや、米ぬかや生ごみを肥料に、廃材を“板”に再生するといった具合だ。21世紀を前に環境問題が最大の関心事の一つになるなかで、自然への負担の少ないリサイクルの取り組みや資源の有効活用が一段と広がっていきそうだ。
天然石張り護岸パネル
薄型のセメントボードに溶岩などを張った河川護岸用パネル「ナチュロックビオボード」は、自然共生型の工事材料として土木建設業者などの注目を集めている。“無粋”な白いコンクリートが目立たないうえ、天然石の表面などに植物が繁茂して、周りの環境に溶け込むのが特徴だ。
日本ナチュロック(東京・港区)は中小の河川向けに新型のコンクリートボードを開発した。日本セメントと共同で、この九月から「ナチュロック・ビオボード」を販売している。既存のコンクリート護岸の表面に張るだけで、コンクリート部分を壊さない。工事のために河川の環境破壊をしなくてすむという。
「ナチュロック・ビオボード」は透水性が高い自然石の表面の微細な孔に生物が生息できる空間を確保したもので、施工から数年後にはコケや草が生え、自然な状態に近づく。このため、郊外から都市部の中小河川で幅広く使え、「生態系の再生に一役買える」(佐藤俊明専務)という。
景観保持と環境保護意識の高まりに伴って、コンクリートブロックの需要は減少している。通産省がまとめた工業統計によると、コンクリートブロックの出荷量は94年の約1,700ト万トンに対し、95年には1,600万トンと7.7%減少。「96年は二ケタ減が間違いなく、97年も一段の需要減が予想される」(全国土木コンクリートブロック協会)と厳しくみている。
需要減の背景には、建設省が環境保護と景観維持を目的に河川護岸工事でのコンクリートブロックの使用をやめるとしたことがある。近い将来、景観を損ねるようなコンクリートブロックの使用を全面的にやめる法改正も予定されており、景観に配慮したコンクリート二次製品の需要が増えていきそうだ。