HOME > プレスリリース > 新聞・雑誌 > 1998.6.20 東京新聞

1998年6月30日

ビオガーデン 「小さな庭の小さな生態系」


1998年6月30日 東京新聞

小さな庭の小さな生態系 ビオガーデン

 直径40センチほどのわずかな空間に、草木が茂り、花が咲き、コケが生え、ちょうや小鳥がやってくる。水と植物と生き物が共に生息する小さな生態系、「ビオトープ・ガーデン(ビオガーデン)」だ。

 この小さな庭を企画した日本ナチュロックの佐藤俊明さんは、「失われつつある自然そのものの美しさや、生物の生息場所を身近に感じてもらえたらと考えました」と話す。
素材は富士山の溶岩、コケ、敷砂、紙製の容器などで、すべて再生できるもの。植物は道端の雑草や庭の木など。
「ビオトープ」は、ドイツ語で「生物」の意味の「ビオ」と、場所を示す「トープ」の合成語で、安定した生活環境を持つ多様な動植物の生息空間のこと。自然緑地の保全、再生の意味もある。
ドイツの農村地域で動植物の生息空間が徐々に減っていることから、それを取り戻そうと始まった考え方だ。日本でも最近は、公園造成の時に造られるなど関心が高まっている。
同社は、自然景観を損ねる河川護岸用のコンクリートブロックを覆う、天然石を利用したボードを開発しているメーカー。天然石はコケ類が付着しやすく、生物の生息する格好の空間となる。天然石を使えば、さまざまな植物が育ち、昆虫や小動物が暮らし始め、サワガニや魚も生息するようになるというわけだ。
富士山のふもとで生まれ育った佐藤さんが、年ごとに周辺がコンクリート化されていく姿を見て、富士山の溶岩を埋め込んだブロックを思いついたのだという。そのボードを身近にコンパクトに取り込んだのがビオトープ・ガーデン。
「植物や生物の生息する基盤を提供しようという発想です。ただ、素材は、日本にあるものでなくては意味がありません」
輸入岩石などには小さな虫が入ったままのことも多く、それが日本の他の生物に空く影響することもあるからだ。

 全国の自然保護団体や個人会員で組織する日本生態系協会・池谷奉文会長は「ビオトープという考え方は日本でも約十年ほど前から取り入れられていますが、最近では誤解も目立つ。池さえ造ればビオトープになるというわけではありません」と警告する。
ビオトープを作ろうとして外来植物を植えたり、生息場所でない川にニシキゴイを放すなどで、そこにすんでいた生物を追いやってしまうような本末転倒の例があるという。
「地域にすむ生き物をどうやって守っていくかという方法の一つがビオトープ。残っている生息空間は維持し、なくなってしまった空間はその地域の植物などで復元してやらなくてはならないのです」